☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
女優としてのグレタ・ガーウィグは、ノア・バームバックの「フランシス・ハ」がすごくいいが、ほかの映画でも自然な演技で目をひく。「フランシス・ハ」では共同脚本を経験しているし、パートナーはノア・バームバックだし(ノア・バームバックはキャリアの初期にウェス・アンダーソン映画の脚本に関わっている)、映画のセンスを磨くのにすばらしく恵まれた環境だったのではないかと思う。「レディ・バード」は彼女の初監督作品ながら、いきなり集大成かのような凄みがある。「6才のボクが、大人になるまで。」の女性版のような映画をめざしたというが、遜色ない出来栄えだと思う。実際のところ鑑賞中に「6才のボクが、大人になるまで。」がちらっと思い浮かび、そのときはすぐに映画に引き戻されたが、やはりテーマが似ていたためだろう。当初のタイトルは「Mothers and Daughters」とストレートなもので、高校時代から大学入学までの母と娘の物語が中心だ。高校時代の自意識過剰の痛々しさは世界共通のようで、だれもが共感できるところが多々あると思う。正直そういう面はみていてあまり楽しいものではないが、その頃に特有の生々しさはやたらまぶしかったりする。親子の間のはげしい衝突や、友達との喧嘩や修復など、思春期の目には疎ましいだけの出来事が、好きな異性とのあれこれにも増して、ずっと重要なことであったかもしれないことを感じさせる。それにしても、アメリカのサクラメントの町並みはうっとりするほど美しい。それもこの映画の力量なのか、とにかく嫉妬するくらい美しかった。
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