ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ 監督:マイケル・ショウォルター

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
パキスタン人のコメディアン・クメイルとアメリカ人の大学院生・エミリーの恋愛映画。イスラム教の国であるパキスタンは見合い結婚が常識らしく、アメリカ人として暮らしているクメイルの一家も例外ではないらしい。クメイルは家族とは別居しているが、たびたび実家に帰り(実家もアメリカ)、両親が勝手に準備した見合いを何度も受けさせられる。内面がアメリカ人のクメイルは信仰心はないし、見合いで結婚相手を決める気はさらさらない。とはいえ、もし白人と自由結婚したら勘当されるのは必然で、そんな事態は望んでないクメイルは本心を家族に隠したまま見合いをずるずる続け、ついにエミリーにばれてしまい、別れることに。それからまもなくエミリーが原因不明の重病にかかって昏睡状態となった。設定がユニークだし、先の読めない展開に終始ひきつけられ、よくできた話だなあと思ってみていたら、エンドロールで実話だと知った。それにしてもいい脚本だと思う。波乱万丈の実話もそのままでは映画にならないから、だいぶ脚色があるだろう。クメイル役は本人のクメイル・ナンジアニで、脚本も書いたらしい。クメイルは騒がしいコメディアンではなく、ポーカーフェイスの涼しい顔でジョークを淡々と話して聞かせるタイプだ。ステージで話しているさまはコメディアンというより、サラリーマンがプレゼンをしてるようにみえる。公私ともにそんな佇まいなのが好ましく、だんだんクメイルのキャラが際立ってくる。ウディ・アレンはユダヤ人の出自をネタにすることが多いが、クメイルはウディ・アレンのパキスタン人版ともいえるような才能を垣間みせたと思う。この映画は思いがけず大ヒットしたそうなので、クメイルの次回作もあり得るかもしれない。大作だとまわりからあれこれクチバシを突っこまれ才能を発揮できそうにないから、しばらくは小さな映画で自由にやってほしい。


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