グランド・ブダペスト・ホテル 監督:ウェス・アンダーソン

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
一回目にみたときストーリーがいまひとつ頭に入ってこなかったのは、画のおもしろさと美しさのためだった。あまりに見事なので字幕を追ってられず、映像に目を奪われるというか、はっきり言って字幕を読むのがわずらわしい。細部の細部まで味わいたい。字幕なしで映画をみられるように英語の聴き取り強化を再開させなければ、と何度も思うけどなかなか続かない。スチュワート・リトルで特訓したこともあるけど。二回目の今回はストーリーも追うことができた。時間軸が1932年、1968年、1985年、現在と4つあって、画面のアスペクト比を年代によって使い分けているのがまずユニークだ。中心となるのは1932年で、映画全体のカラーはコメディー寄りだが、この年はナチスがドイツの選挙で圧勝した年でもあり(1929年には大恐慌が起こっている)、軍国主義やファシズムが台頭してきた時代の暗く不穏な空気もただよう。冷徹な時代だからこそ、グスタヴ(レイフ・ファインズ)とゼロ(トニー・レヴォロリ)のコミカルなコンビがやけに愛おしくなる。グスタブはバイセクシャルでゼロは移民という、ナチスが嫌うような典型的な人物でもあった。今回のウェス・アンダーソン映画の主人公たちも、一言でいうとかっこいい人たちだ。変わり者で頑固で変な趣味を持っているようなところがこれまでの映画の主人公たちとも共通で、信念に一本芯が通ってるというか、曲がったことは嫌いというか、情に厚いというか、人間として大切な部分を持っている人たちだと思う。おかしみが生きるのは登場人物たちが魅力的だからだろう。

 


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