ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 監督:ジョー・ライト

☆☆☆☆☆☆☆★★★(7点)
チャーチルのことはもちろん知っていたが、チャーチル自身にスポットをあてたものをみるのは、映画のほか本やドキュメンタリーやテレビ番組を含めても初めてだ。チャーチルといえば、ドイツに対する好戦的なイメージが強い。それにあの風貌やキャラクターはヒトラーにも負けないほど個性的で(風貌はヒッチコックに似てる)、20世紀の悪の代表のように語られることの多いヒトラーと対峙する連合国側のリーダーとして、これ以上頼もしい政治家はいない。それがこの映画をみる前のチャーチルの印象だった。「ヒトラーから世界を救った男」というような邦題からしても、だいたい日本人のチャーチルに対するイメージはそんなようなものなのだろう。原題は「Darkest Hour」。直訳して「もっとも暗い時間」。負け戦となるのが濃厚で、ヨーロッパ大陸のイギリス陸軍は壊滅寸前、こうなるとヒトラーと交渉するしかないのか、それとも徹底抗戦するのか、後者をとろうにも議員たちの執拗な反対に遭い、自身も揺れ動きながら決断を迫られるチャーチルの暗黒の日々が描かれる。いろいろと脚色はあるみたいだが(たとえば地下鉄のくだりは完全に創作らしい)、チャーチルってこういう人だったのか、と生身の人間としてのチャーチルがみられる。イメージどおりの変人ぶりも多々みられるけど。チャーチル役のゲイリー・オールドマンはまったくの別人だった。目と声だけはゲイリー・オールドマンだけど、それもあらかじめ知っていたからわかるだけで、知らずにみたら誰だかきっとわからない。実在の人物を映画で描く場合、特殊メイクで似せるか、ちょっと似てる人に演じさせるか、ぜんぜん似てないし特殊メイクもしないけど演技力あるいは人気で役者を選ぶかのどれかだ。チャーチルはやはりあの風貌がチャーチルそのものをあらわしており、一流のスタッフ(辻一弘)による特殊メイクで本人に酷似させたのは必要なことだったと思う。それに外見を考えなければ、チャーチルの役はゲイリー・オールドマンにぴったりだ。水を得た魚という感じで、みごとな演技だった。

 


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