女は二度決断する 監督:ファティ・アキン

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
主演のダイアン・クルーガーが2017年カンヌ国際映画祭女優賞を受賞。監督のファティ・アキンのことは「ソウル・キッチン」がよかったので名前を覚えていた。トルコ系ドイツ人で、本作はファティ・アキンの友人の家族も犠牲になった、ネオナチによるトルコ人移民に対する爆弾テロが下敷きになっているらしい。ドイツは移民の受け入れに積極的だが、その反動でネオナチがより過激になってしまったようだ。クルド人移民の夫と幼い息子を爆弾テロで殺されたドイツ人女性カティヤ(ダイアン・クルーガー)。映画は彼女の視点に沿って話が進むから、どうしたって彼女の側につきたい気持ちになると思う。でも夫がかつて麻薬の売人で服役していた過去や、カティヤが二人を失った苦しみからコカインに手を出したことなど不利になる要素が多く、司法はけっして被害者の味方ではないことをまざまざと見せられる。そもそもドイツ社会における移民に対する偏見は根強く、警察も例外ではない。家族は助けにならないし(母親もまた移民に偏見を持っている)、妊娠していた友人は死んだ夫と息子を思い出させる。スマホが普及して久しいが、今は手軽に動画や写真を手元に残せるぶん、生きていたころの夫と子供を簡単にありありと見ることができてしまう。それは大事な思い出であると同時に、身をえぐられるような痛みを伴うにちがいない。海に走っていく夫と子供の動画の中で、「ママ、おいでよ」と夫と子供がよぶのだが、その後カティヤが下した決断はつらく切なくすごく悲しいものだった。忘れられない映画となった。


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