恋はデジャ・ブ 監督:ハロルド・ライミス

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
気象予報士のフィル(ビル・マーレイ)が同じ一日を半永久的にくりかえすという話。フィルはわかりやすいほどいやなやつで傲慢な男だが、現代人の代表と言えなくもない。自意識過剰で疑り深く、他人を簡単に信用しない。自分は常に過小評価されてると感じているし、自分の知らない世界を敬うことを知らない。フィルの場合はそうした傾向がやや強めだが、たくさんの不満で一日を過ごしてしまう人は彼だけじゃないと思う。典型的な現代人のフィルが時間のループにはまり、これまただれもがやってしまいそうなことを思いつく限りやり尽くしていく。最初は戸惑いながら同じ一日をおなじように過ごしていたのが、どんな過ごし方をしてもかならずリセットされることを確信してからはパトカーとのカーチェイス、カロリー無視の食べ放題、個人情報をちょっとずつ聞きだしたうえで女性を口説く、大金を盗むといった行為を重ねる。同僚のリタ(アンディ・マクダウェル)だけはどうやっても口説けず、どんな一日を過ごしても相手の記憶には残らず、おかげで同じ一日にも飽いてきたのか、鬱になって今度は自殺をくりかえす。そんな最悪の状況からどう持ち直していくかがこの映画の一番の見どころだ(笑えるところでもある)。人との出会いを大切にし、本を読み(テレビのリポートでチェーホフを引用)、ピアノを習い(うまくなりすぎてジャズのセッションまでやってのける)、氷の彫刻をし(完全にプロの腕前)、人助けをする(タイミングよく事故現場に駆けつける)。そういう一日をくりかえすことで、フィルが別人のようになっていく。監督のハロルド・ライミスはこの映画の着想をニーチェの永劫回帰から得たらしい。「一回性の連続」を永久にくりかえしながらも強く自己肯定していくのが超人だという思想だ。だからつまり、フィルは超人になれたのかもしれない。


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