僕達急行 A列車で行こう 監督:森田芳光

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
森田芳光の映画はあまりみておらず、「間宮兄弟」と「椿三十郎」と「武士の家計簿」くらいしか記憶にない。その三作にしても記憶がはっきりせず、こんな作風だっけ? と思うほど今作は何というかオフビートだった。この独特さは小津安二郎や山田洋次の「はずれた」感じを彷彿とさせる(「僕達急行」はお茶目な感じが強いけど)。融資がおりなくて工場の経営が厳しいとか、女性とうまくいかないとか、劇中の登場人物たちはそれなりにそれぞれ悩んでいるが、まったくと言っていいほど深刻さがない。淡白なノリでサクサクと話が進んでいく。なにしろ日常に占める趣味(鉄道)の割合が大きすぎて、仕事も女性も二の次なのだから。主人公たちにとってすべての出来事は、それがいいことか悪いことかは鉄道を軸に考えられ、そういう考えでいけば、普通の人とは物事の受けとめ方がずいぶん変わってくる。たとえば小町圭(松山ケンイチ)は福岡への転勤(左遷)を言い渡されるが、九州の鉄道に憧れていた小町としてはかなり喜ばしいこととなる。多かれ少なかれ多くの人が自分の都合で物事を受け止めるとは思うが、小町は気持ちがいいくらい我が道を突き進んでおり、なかなか真似のできることではないと思う。でも本来はこうじゃないか、あるべき生き方なんじゃないかという気がした。なんにせよ、笑えるし、教訓もあるし、いい薬になる映画だ。


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