☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
フランス郊外の団地が舞台で、3組の男女のストーリーがそれぞれに展開していく。運のない中年男性と夜勤の看護師、忘れ去られたかつての人気女優と鍵っ子の10代の青年、息子が刑務所にいる移民の老婆と不時着したNASAの飛行士、という3組だ。まったく接点のない人たちが偶然出会い、ぎくしゃくした関係からだんだん心を通わせていく様子が会話中心に描かれる。そんな6人なので、登場シーンとなる映画の冒頭は、すごくばらばらな感じで脳をすごく刺激してくる。まったく異なる人間の日常をちょっとずつ切り替えながら見せられるだけなのだが、NASAの宇宙飛行士がいることで宇宙の映像も挟まれることになり、とても壮大な人間ドラマをみているような気になる。マンションの管理組合の総会のような場面では、「運のない中年男性」スタンコヴィッチがエレベーターの入れ替えに一人反対する。理由は2階に住んでるからエレベーターは使わないというもので、これがもし日本ならつまはじきにされかねないが、さすがにフランスでは個人の意見が尊重され、彼だけ支払わないことが認められる(ただしエレベーターを使ってはならないという条件つきで)。その後まもなく彼は車椅子生活になり、エレベーターが必須になってしまう。こっそりエレベーターを使うには深夜しかなく、食料を手に入れるお店はどこも空いてないので病院の自販機でお菓子を買い、帰るときに夜勤の看護師と出会うという展開。3組の話はどれもよく練られていると思うが、ジョークとしか言えないようなネタもたくさん用意されている。そのあたりのバランスがみごとで、観終わるころにはすっかり感動していた。
Bitly