僕と世界の方程式 監督:モーガン・マシューズ

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☆☆☆☆☆☆☆★★★(7点)
国際数学オリンピックを題材にしたドキュメンタリーをもとに映画化した作品。数学の天才というと自閉症のイメージがあるが、この映画の主人公ネイサン・エリスもそうだ。数学の天才という響きにはちょっと甘美なものを感じないこともないけど、当人たちは世間で浮くことに苦しんでおり(いじめにも遭いやすい)、普通であることに憧れている場合が多い。とはいえ国際数学オリンピックの世界では、上には上がいる。数学において突出した才能をもっていたはずが、オリンピックの場では普通になってしまう。望んでいた普通とはちょっと違う普通だけど。映画の中ではネイサンと同じ自閉症の子が選考にもれ、普通じゃない扱いを受けるのも特別な才能があるからと言われてきたのに、その才能が特別なものではなかったと知った今、いいことなんて何一つない、といったことをネイサンに吐露する場面がある。ネイサンを幼いころから指導してきた、元数学オリンピック出場者の高校教諭マーティンもまた、才能を十分に開花させることができずに中年になった。頂点というのは苛烈な場所で、そこで争うのは残酷な結果をもたらすこともあると思う。自分にはそれしかないという思い込みや刷り込みを捨てることができたら、ちがう生き方も選べた。ネイサンの才能よりもそれによる生きにくさに焦点をあてて描かれていたから、その価値がよくわかる映画になっていた。


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