☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
タイムトラベルがわりとおざなりに、軽く扱われているところがかえってよかった。この映画はリチャード・カーティスが「残り24時間しか生きられないと告げられたら何をする?」という友人との何でもない会話から生まれたらしく、そこから自由に発想していったことがよくわかる。クローゼットなどの狭いところで戻りたい日時や場所を強くイメージすれば、その時点に戻れるという手軽さなので、主人公のティム(ドーナル・グリーソン)も何かと多用する。会話の内容や行動のタイミングなどちょっとしたことを変えるだけで未来に変化が生じるのがおもしろい。場合によってはほかを変えれば出会うべきだった人と出会えなくなることもあり、またどうしても結果を変えられないことも多々あるのだとティムは学んでいく。そしてタイムトラベルが万能ではない、扱いが非常に難しいものということで象徴的なのが、こどもができたあとはそれより前の過去には戻れないことだ。タイミングによって精子はちがうから、少しでも過去にずれが生じれば同じ子は生まれないのだ。時間には実体がないが、相対性理論では過去、現在、未来のあらゆる瞬間が実在するとされている。ティムはタイムトラベルで毎日を二度くりかえす、あるいは死ぬまえの父と卓球をしに何度も過去にもどる、その戻った過去からさらに子供時代へとさかのぼる。それでもティムのほんとうの現在はみんなと同じように流れていく。家族の物語をとおして、この正体のわからない不可思議な時間というものを考えさせられた。
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