ジュピターズ・ムーン 監督:コルネル・ムンドルッツォ

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☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀作品賞をとり、カンヌでも評価の高かったハンガリーのSF映画。ハンガリーは映画産業に力を入れていて、質の高い作品が多い。ハリウッドやイギリスやインドや韓国の大作映画みたいには予算がないにもかかわらず、限られた予算で意欲的な映画を作っている。そして、どの映画も暗い。「ジュピターズ・ムーン」はシリア難民の少年アリアンがハンガリーに亡命しようとするところから始まる。父親とはぐれ、森に逃げこむが国境警備隊に丸腰なのに撃たれてしまう。このあと理由は不明だが、アリアンは銃撃によって空中を浮遊できる能力にめざめたらしい。いっぽう、シュテルンという医師は医療事故で病院をクビになり、難民キャンプで働いていたところ、アリアンの診察をすることになる。そこでアリアンの浮遊を目にし、戸惑いながらも金儲けに利用しようと考えるが、何度もその奇跡を目撃するにつれて、アリアンは天使ではないかという信仰を抱きはじめていく、という展開だ。ストーリーはともかく、映像表現がすごい。アリアンの浮遊シーンでCGを使っておらず、それが強力な画力となっていた。CGはかなり技術が向上して本物らしくなったとはいえ、本物の映像にはまだまだかなわないことがよくわかった。カーチェイスや森の中の疾走シーンなども同様で、長回しで臨場感がある。ハンガリー政府が映画産業に協力的だからこそ、街を巻きこんだ大規模な撮影が可能なのだろう。監督のコルネル・ムンドルッツォはハリウッドから声がかかり、次回作が決まったらしい。このパターンは駄作になることが多いけど、やっぱり期待もしてしまう。「ジュピターズ・ムーン」のように、みたことのない映像を撮ってほしい。


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