☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
人の世のいやなところや残念なところを、ユーモアを交えてあけすけに描くのがノア・バームバックはうまいと思う。ウディ・アレンの後継者は出そうで出てこなかったが(ウディ・アレンはまだ健在だし、それにこの時代、作家主義がどんどん難しくなってきてるし)、彼がそうだと言ってもいいくらいだ。この映画をみながら、ふっとそう思ったことで、胸がちくりとした。ウディ・アレンの後継者という名誉をついにだれかに奪われてしまった、というようなちょっとさみしい気持ちになったのだ。僕はウディ・アレンを目指していたわけではないし、職業も全然関係ないけど。ところでこの映画は、中年夫婦と若者夫婦が急接近し、停滞し、離反していくさまを描いているのだが、中年夫婦のほうが純粋で誠実で、裏切られることで多くの気づきがあり成長していくという、中年の成長物語になっている。中年ならではの、成長は成長でもずいぶん後味の悪いものを含んではいるが。まわりからは成長とはわかりにくい、少し賢くなっただけ、あるいはふっきれただけ、というくらいにしかみえないジョシュを演じたのがベン・スティラーで、はまり役だった。それにジェイミーを演じたアダム・ドライバーには、ジョシュじゃなくても騙される。