500ページの夢の束 監督:ベン・リューイン

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☆☆☆☆☆☆☆★★★(7点)
自閉症の女の子ウェンディ(ダコタ・ファニング)が初めてのひとり旅をする話。施設で暮らしているウェンディは「スター・トレック」おたくで、ある日脚本コンテストの存在を知って脚本を書くのだが、推敲が念入りすぎて完成したときには郵送では間にあわない日にちになっていた。ウェンディとしては、脚本コンテストの賞金で家を買い戻したいと考えていて(家は母が亡くなって姉に子供ができてから売りに出されている)、それさえ叶えば施設をでて家に帰れると信じている。だからぜったいに応募しないといけない。というわけで、ウェンディは信号を渡るのも一苦労なのに数百キロ離れたハリウッドへひとりでむかう。ダコタ・ファニングをみたのはひさしぶりで、最近は妹のエル・ファニングの活躍をよくみるが、大人になったダコタはエルとはちがう魅力を放っていた。子役時代は天才ともてはやされ、しばらく姿をみなくなり(切れ目なく映画には出ていたみたいだけど話題にはのぼらず)、大人になると少々陰のある美人になっていたところが、ちょっと安達祐実を連想させる。陰があるというのも、子役時代のあどけなさを知っているから感じるだけなのかもしれないが。ウェンディの旅はやはり災難続きで、まずバスに乗るにもチケットを買うところから苦戦しており、施設の飼い犬を連れていたためにバスをおろされる目にもあう。この映画をみていると、自閉症というハンディーのあるウェンディに対し、世間の対応が冷たいように感じられるが、それが現実というものだろう。見た目にはウェンディは普通だし、ちょっと様子をみていれば変わってる子だなくらいは思うかもしれないが、自閉症の苦労にはそんなに頭がまわらない。それにたとえば仕事にはそれぞれ背景に決まり事というものがあって、なかなか特別扱いは難しい。ウェンディからなけなしのお金とiPodを盗んでいったカップルは言語道断としても、ほかの冷淡な人たちはノーマルすぎるくらいノーマルな反応を示したにすぎない。おかげで映画はご都合主義に傾くことなく、ウェンディの成長をうまく表現できたのではないかと思う。「グランド・ブダペスト・ホテル」のトニー・レヴォロリがアルバイト先の同僚役で出ており、あの柔和な顔がウェンディのコミュニケーション面のこれからについて、明るい兆しをあらわすのに一役買っていたと思う。

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