ヤング≒アダルト 監督:ジェイソン・ライトマン

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☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
学生時代は美人で人気者だった女性が、37歳の現状を受けとめきれずにいる痛々しい話。メイビス(シャーリーズ・セロン)は恋愛も仕事も下降ぎみで、アルコール中毒ではないかと思うくらい酒が手放せないでいる。37歳になった今でも美人で通るのかもしれないが、すさんだ心そのままに顔にはきつい表情がはりつき、ハローキティのTシャツは似合ってない。学生時代は当然だった優越感とその態度も、37歳にもなるとかなり痛ましくて、片想いのバディの妻ベスに不憫がられるのも無理はない。それも心から哀れんでいたのだから、メイビスからすれば屈辱そのものだ(とはいえ、ベスが純粋に哀れんでいたかはちょっとあやしい)。昔は両想いで結婚寸前まで行った男が(ふたりの間にはこどもができたが流産してしまった)、軽蔑する田舎者の女と結婚し(自分は都会で成功したのに)、こどもを産んで幸せな生活を送っているのだ。学生時代に栄光を極めた人がその後没落、あるいはぱっとしない人生を歩んでいるというのはわりとよくあることであると同時に、人の噂にのぼりやすい。ベスのメイビスに対する哀れみは一見まっとうな優しさにみえるが、没落した人気者への優越感に近いものはあったかもしれない。そして学生時代からずっとどん底にいた、いじめられっ子だったマット(パットン・オズワルト)だけがメイビスの唯一の理解者なのだが、それもそのはずでマットはメイビスの変わらぬファンだからだ。バディやベスや大勢の人たちの前で大恥をかいたあと、メイビスはマットと寝る。それもまたとても痛ましい行為だ。そもそもメイビスは混乱していたし、それにかつての学園のマドンナが年をとり、いまや魅了できるのは存在すら忘れていたオタクだけだったというのはなんだか切ない。しかもその行為によって救われることもなかった。メイビスを救ったのはマットの妹だ。どん底でなければ耳も貸さなかったに違いない、学生時代はまず相手にしなかったような目立たない女の言葉だった。メイビス自身が薄々失敗だったと感じ始めているこれまでの人生を、それで万事よかったと後押ししてくれる言葉だった。メイビスはミネアポリスに戻ってどうなったのか、映画では描かれなかった彼女のその後の人生が気になる。たいして変わらない日々を続けたのかもしれないし(こちらのほうが可能性は高そう)、人生の転換点となったかもしれない。


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