ラルジャン 監督:ロベール・ブレッソン

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
10年ほど前に初めてみたとき、アート写真のような画の美しさや、独特な音の使い方、淡々と進む悲劇のストーリー、後半に出てくる老婦人の質素な生活の描写、といったところに妙に惹かれてDVDを買った。カメラをあまり動かさず、役者も決められた動きしかしてない、計算されつくしたような作り方が小津安二郎を思わせた。ブレッソンはセリフも説明的描写も削りまくったのか、非情なまでに無愛想でドライな映画となっている。盛りあがりはないが、飽きずに見ていられるアートとしての映画の魅力がある。救いがない、どん底まで落ちていく絶望的な話だが、不思議と鑑賞後の気分は悪くない。何かすごく優れた映画をみたという満足感のほうが強い。老婦人が出てからの後半はすべてよかった。慎ましい一家の生活をささえ、殺人犯の主人公をすんなり受け入れて面倒をみる。言葉は少なく、自首をすすめることも説教をすることもない。淡々と家事をこなし、畑でいもを掘り、主人公の朝食になみなみ注いだコーヒーを運ぶ。その後の結末はひどいものだったが、あの惨劇のシーンはブレッソンの映画的美意識が詰まっているように感じた。

 

 


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