万引き家族 監督:是枝裕和

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10点)
是枝裕和の映画はぜんぶみてきたので「万引き家族」ももちろんみる気でいたが、タイトルや広告の写真などからなんとなく「誰も知らない」が連想され、きつい話ではないだろうかという予感があってつい後回しにしてきた。「誰も知らない」のようなきつい話は、僕としてはそれなりに心構えが必要だと感じる。映画に飲みこまれてしまわないように、心身の調子を整えておきたいと思った。おかげで公開からずいぶん遅れてしまうことになったが、最近は自分の子供への愛情がだんだんと育まれてきたこともあってちょうどいい時期だったかもしれない。反面、児童虐待を受けていた「ゆり」の動向に心悩まされて、映画をみるのがつらいとも感じた。それに、あまりに常識の枠からはずれた家族の無防備さが、この先ろくでもないことが起きると予想できたし、とくに一家の大黒柱の治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の倫理観のようなものが根本的にゆがんでしまっているのが致命的だった。そんな彼らだったからこそ、家族とは何ぞやという難しい問いについて、現代人の痛いところを突いてくるパワーがあったのだと思う。日本人には核心的とも言える問題でありながら、海外にも通ずる問題だ。「家族」を掘りさげる手ぎわはいつもみごとだ。カンヌ国際映画祭のパルムドールをとったのも頷けるが、それにしても安藤サクラの後半の演技がすごかった。あの表情が思い浮かぶだけで、胸のあたりが熱くなる。


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