スイス・アーミー・マン 監督:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン

☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
無人島で死にかけていた男ハンク(ポール・ダノ)が、スイスアーミーナイフのように多機能な死体メニー(ダニエル・ラドクリフ)といっしょにサバイバルするという話。死体のメニーからは異常なほど腐敗ガスが発生しており、そのおならの推進力を利用して海を渡るという、冒頭から独創的だ。お笑いのコントみたいでもあるけど、美しい映像と音楽と役者2人のすばらしい演技のおかげで、洗練された映画になっていた。死体のメニーがどれくらい多機能かというと、おならで火をおこせるし、体内にためこんだ雨水を排出して飲み水やシャワーにできるし、勃起したアレを方位磁石として利用できるし、歯でカッターのような使い方ができるし、斧のように材木を両断できるし、口に入れたものを銃みたいに発射することもできる。そして喋ることさえできる。メニーがいなければ、ハンクは生き残れなかっただろう。だれもが気になる点は死体であるメニーは現実なのか、それともハンクの妄想なのかといった点だと思う。そこははっきりしないと言えばしないのだが、現実と考えたほうがおもしろい。それに、実は妄想でしたといったような夢オチの結末は、せっかくの不思議さを殺してしまうし、はっきり言うと今や洗練されてないやり方だという気がする。この映画の終盤で起こった一幕は、これは妄想ではないと断言してしまっていると解釈したほうがずっと深みがあると思う。それにしても、人前でおならをしないという常識に疑問を呈し、それについて考えさせられ、感動させられたのは初めてだ。


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