プリズナーズ 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
こどもの行方不明や誘拐事件はニュースに出るたびヒヤリとする。こどもがいる身として、すぐそこに危険が潜んでいるかもしれないことを突きつけられるし、こどもが死んでしまうほど不幸な目にあうのは間違っている気がしてならない。現実はこどもの行方不明だけでも世界で毎年800万人もいて、一日に22000人がいなくなっているという。日本では年間8万人だそうだ。このうち事件性のあるものがどれくらいの数字になるかはわからないが、あまりに多すぎる。「プリズナーズ」では娘が誘拐された父親が容疑者を拉致して拷問してしまうというストーリーだ。誘拐の場合なにより時間が勝負なので、娘の居所を吐かすために容疑者を執拗に拷問する父親の気持ちもわからないでもない。だが父親のケラー(ヒュー・ジャックマン)はサバイバルに長けた人物で、拷問もプロ並みだからやり方がかなり残酷だ。愛する者のためとなると人間はどこまでも冷酷になれる、これまでもそういう映画をたくさんみてきた。むしろ、人間とはそういうもので、一度スイッチが入った暴走をいかに踏みとどまらせるかのほうが重大な問題かもしれない。頭に血がのぼったら行くところまで行ってしまいそうなケラーだが、彼を踏みとどまらせたものは何だったのか。ケラーは宗教心の強い男として描かれているので、それは信仰心だったとも言える。一方で、同じく誘拐された父親フランクリン(テレンス・ハワード)は娘のためなら自分の命を差し出してもいいとは言うが、拷問には最後まで反対だった。だがぎりぎりのところで、絶対に反対しきれない自分と葛藤しており、ケラーの拷問に手を貸している。フランクリンは完全にノーマルで、僕ら自身といえるかもしれない。フランクリンの娘が助かったのは幸運と娘自身の力によるものが大きく、フランクリンにできたことは何もない。だがケラーは優秀な刑事をさしおいて、自力で犯人にたどり着き、娘の居所を探しあてた。そこには常識的な目では計れない正しさというものがありそうだ。


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