マーシュランド 監督:アルベルト・ロドリゲス

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☆☆☆☆☆☆☆★★★(7点)
イギリスBBCの動物系映画のような美しい空撮から映画がはじまる。しっかりお金をかけ、映像にもこだわった作品の予感がし、骨太のミステリーではないかと期待も出てくる。1980年代のスペインが舞台なのだが、いつの時代かと思うほど戦時中のどこかの村のような殺伐とした雰囲気で、どんな違法なことが行われていても不思議じゃない感じだ。これに少女の殺人事件という、いかにもきな臭い出来事が加わる。拷問されて殺害された遺体は痛ましく、被害者が10代のきれいな姉妹というのもグロテスクだ。この事件をふたりのわけありの刑事が追う。よく似た事件が過去にもあったことがわかり、麻薬もからんでくる。麻薬がからんでくるともうお手上げというか、冷徹な現実のオンパレードできっとそれはそれでありがちで興味も失せそうだと思っていたら、そういう展開でもない。伏線が多くて、事件の真相がはっきりしない展開が待っていた。いわゆるどんでん返しのラストなのだが、真犯人はぜったいにこの人と断言しきれないところがある。映画的には間違いなくこの人だと思っても、たくさんの伏線に混乱させられてしまう。ただ、この映画の中心にあるのはフランコ政権後まもないスペインの、暗い混乱期そのものであるに違いなく、だからこのような構造になったのではないかと思う。刑事のひとりフアンはそれを体現するような人物だった。


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