さざなみ 監督:アンドリュー・ヘイ

☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
45年連れ添った夫婦のもとにスイスの警察から手紙が届き、それは夫ジェフ(トム・コートネイ)の昔の恋人の遺体が50年ぶりにみつかったという知らせだった。死んだ場所が雪山だから遺体は冷凍保存された状態で、若い姿のままだったらしい。夫婦が住んでいるのはのどかなイギリスの田園風景が似合う素敵な家で、ジェフがその手紙を開く朝のダイニング風景はいかにも平和そうだ。画面だけをみていれば、ハートウォーミングな映画のように錯覚しそうだが、この手紙によってサスペンスがまぎれこんできたような形だ。夫婦間の秘密というものはどこか不穏で、しかも45年続いてきた関係ともなるとしゃれにならない場合もある。ほとんどは風化してしまいそうなものだが、この夫婦の場合はそうではなかった。遺体が若いときの恋人のままだったというのが、風化していないことをわかりやすく伝えているようにも思える。互いに関心をすっかり失ってしまった夫婦なら何の問題にもならなかったかもしれないが、ジェフとケイト(シャーロット・ランプリング)は互いを深くいたわりながら愛し合ってきたようだ。ふたりの間にこどもがいないというのも影響があるのか、恋人同士のような感覚をいまだに持ち合わせている。一週間後に結婚45周年のパーティーを控えているというこのとき、手紙によってジェフは昔の恋人カチャのことにとらわれ、そのほかのことへの関心を失っていき、ケイトはカチャに嫉妬する。しかもケイトはジェフが隠していた昔のフィルムをみつけ、さらにきつい事実を知ることになってしまう。45年もの付き合いともなれば、表面的に何事もなかったように繕えるだけの知恵というか技術のようなものがあるから、まわりの人たちは気づかない。映画的にもあきらかに破綻するような表現はみあたらない。それでもシャーロット・ランプリングの演技によって、何かが壊れてしまったことがわかる。45年という年月が重くのしかかってくるというものだ。


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