パラサイト 半地下の家族 監督:ポン・ジュノ

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
カンヌ国際映画祭パルムドールとアカデミー賞4部門を受賞し、ポン・ジュノが一気に世界に知られた作品。もちろん以前から評価され、有名だった監督だが、この作品のインパクトと数多くの賞を獲得したことで、さらに上のステージにあがったような印象だ。これまでの作品をふりかえってみても、わりとバラエティーに富んでいるので、次回作もどんな内容になるのか読めなくて楽しみだ。今作は露骨な格差社会を描いており、「スノーピアサー」にも通じるところがある。「スノーピアサー」はSFで、ポン・ジュノが初めてハリウッドで撮った作品だが、普遍的すぎたきらいがあり、リアリティーに欠けていた。いっぽうで「パラサイト」は韓国が舞台の韓国映画で、ストーリーは荒唐無稽だが、現実にあってもおかしくないと思えるほど真に迫るものがあった。主人公のキム家が住む半地下の家は韓国ではふつうにあるらしく、この映画でも描かれているとおりなかなかの劣悪な環境で、貧乏人の象徴でもある。天井が低く、湿気があり、不衛生。洪水を起こすような大雨が来たらひとたまりもないだろうと思っていると、実際に映画のなかで大雨がやってきて、ひどい惨状をみせていた。地上に住んでいる人たち、しかも豪邸に住んでいる富裕層には「やれやれ困った」といった程度でしかなく、その貧富のコントラストはあまりに鮮やかだ。こうしたコントラストは作品中のいろんなシーンで描かれ、毒のあるユーモアがよく効いていた。良質なコメディー映画としても楽しめそうな前半だが、お金持ち一家パク家の邸宅に地下があらわれた瞬間から(あるいは前の家政婦ムングァンが夜に訪ねてきた瞬間)映画の空気が変わる。なにかたとえば温度みたいに目にみえないものが一変したような感じさえあり、後半は凡庸な映画とははっきりと一線を画している。それにしても狂騒のなかにも絶えずユーモアがあり、余裕さえ感じさせる。あいかわらずすごい監督だと思った。

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