☆☆☆☆☆☆☆★★★(7点)
イラク戦争でフセイン政権を倒したあとも、治安維持のために駐留するアメリカ。そんななか、砂漠地帯の石油パイプライン建設現場にアメリカ兵2名が派遣されるのだが、イラクの凄腕スナイパーに狙われるという話。アメリカ兵のうち1名は狙撃されて瀕死となり、スナイパーも顔が出てくることはないので、残されたアメリカ兵アイザック(アーロン・テイラー=ジョンソン)の視点からずっと描かれる。スナイパーは走っているアイザックの無線機と水筒を狙撃し、応急処置では止血できない膝を狙い撃ちして、じわじわと意識が朦朧となっていくように仕向ける。簡単に仕留められるはずなのにそうせず、ローカル線だけ生きている無線で会話に引きこもうとする。スナイパーの目的がみえず、翻弄されるアイザックの生き抜くためのもがきが見どころとなっている。ほとんど一人芝居なので、アーロン・テイラー=ジョンソンもやりにくかったのではないかと思う。砂漠地帯の壁ぎわで、追いつめられた一人ぼっちの男をひたすら演じないといけない。でもそんな一人芝居を鼓舞するように、ひざの怪我や銃撃や砂漠の砂ぼこり、そして銃声音の遅れから計算する狙撃者との距離など、緻密にリアルを追求して緊迫感を盛りあげていた。このイラクの凄腕スナイパーは元教師だというが、戦争で開花する才能というものがあるのだと思った。狙撃と悪知恵において突出した才能というのが、なんとも悲しい。
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