☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
原点の「レザボア・ドックス」にかえったような感じで、タランティーノの真髄が楽しめる映画になっている。登場人物たちはタランティーノらしい、癖のある狂人たちばかりなのだが、憎しみに満ちたヘイトフルな人物をずっと映画で描いてきたのかなと、タイトルをみてふと思った。密室殺人というストーリーながら、お喋りや劇中劇や景色(雪や馬の疾走など)がたっぷり描かれ、ゆっくり丁寧なテンポで進む。フィルムにもこだわったというだけあって画が美しく、なんというか薄っぺらくなくて厚みを感じる。登場人物たちはタランティーノの脚本だからということもあるけど、役者陣が個性的であっというまに人物の特徴が頭に入ってくるのがみごと。個人的にはティム・ロスとマイケル・マドセンがひさしぶりにタランティーノ映画に出演したのがまずうれしく、どちらかというと脇役の二人だけど存在感はすごかった。ティム・ロスはクリストフ・ヴァルツがやるような役もはまりそうだ。それから目をひいたのが元・南軍兵士マニックス役のウォルトン・ゴギンズで、この憎たらしいお茶目な顔は一度みたら忘れられない。この映画は密室殺人だけどミステリーではなく、ジャンル分けが難しい。アカデミー賞作曲賞を受賞したエンニオ・モリコーネは、ホラー映画と認識して作曲したらしい。わからないでもないけど、ホラー映画でもない。それにしてもこんなに緊迫感のある会話劇をよく作れるものだと素直に感心してしまった。
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