検察側の罪人 監督:原田眞人

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☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
「わが母の記」をみて以来、原田眞人の新作はかならず観るようにしている。「わが母の記」はひょっとしたら原田眞人のキャリアのピークかもしれず、これ以上のものは二度と作れないんじゃないかと思うくらいすばらしい映画だった。そのあと「駆込み女と駆出し男」と「日本のいちばん長い日」と「関ヶ原」が続き、どれもよかったけど(とくに「駆込み女と駆出し男」)ピークを超えるものではなかった。そして今回の「検察側の罪人」だが、とにかく木村拓哉がよかった。クールな役を演じると、いつもの木村拓哉らしさが薄まって(あの独特の喋り方やしぐさがおさえられ)、道を誤っていく最上という検事のエリートにぴったりだったと思う。木村拓哉が全編にわたって緊張感をみなぎらせているのとは対照的に、新人検事の沖野を演じた二宮和也は終始自然体でマイペース。尋問で容疑者に罵声を浴びせたり、最上と対立したり、最上を尾行したり、検事を辞めたりといろいろあるのだが、二宮和也からにじみ出てくる人柄なのか一貫して自然体というか穏やかな印象だった。原田眞人は長回しで役者に自由にやらせたりするそうだから、どうしても俳優の人柄みたいなものが出てきてしまうのだろう。そういう撮影方法をする監督はまあまあいるけど、傾向的に、人と人の自然な対話がカメラに収められていると思う。捜査の風景や検事の仕事などがリアルに描かれている分、この映画の闇の部分(拳銃の調達や殺人やその後始末やヤクザのからみ等)がやや虚構的に感じられてしまうところが唯一残念だった。


検察側の罪人 DVD 通常版