☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
時間をテーマにした作品は映画や漫画や小説などで数多くあるが、「メッセージ」の特色は言語に焦点をしぼったところだ。過去・現在・未来を同時にみることができる宇宙人は、その能力に応じた言語を使用する。文字にするとループ状のもので、デザインの違いで意味が異なるらしい。言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)が簡単な会話ができるところまでは習得するが、違う次元に生きる人間には扱いきれない代物だ。だがその言語をかかりきりで研究するうち、ルイーズは宇宙人(ヘプタポッド)の時間を超越する能力を得た。フラッシュバックのように未来がみえてしまうのだ。それはただ見るというよりも、現在と未来を同時に生きているようなものにみえる。現在では知り得ない情報を、未来でみつけて現在に引っ張ってくることもできる。ものすごく便利な、そしてきっと危険でもある能力だが、やはりふつうの人間に取り扱いはむずかしいと思う。悪用できるし、未来の自分に起こることを知って精神的にやられてしまうかもしれない。だれもがルイーズのようにはいかないだろう。ルイーズはその能力を地球の自滅を防ぐのに役立てることができた。そして未来に生まれてくる娘が早く死んでしまうことを知りながら、生むことを決断する。「メッセージ」の時間観では時間は流れるものではなくて平等に同時に存在するもので、あるいはループするものだ。その時間が終わってしまえば「はい、終わり」というものではないという世界観には、ルイーズが突きつけられた厳しさとともに、救われる感じもある。死んだら終わり、というわけではないというのは、きっとヘプタポッドからみれば真実なのだろう。