ブレードランナー 2049 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
リドリー・スコット「ブレードランナー」(1982)の続編で、前作の30年後の世界が舞台。前作の主人公デッカード(ハリソン・フォード)も映画の後半に出てくる。「ブレードランナー」といえば近未来アートの先駆けとでもいうような、美術面でも評価の高かった映画で、続編でもその世界観を引き継ぎながら前作以上の美しい世界を作りあげていた。「ブレードランナー」の暗さは、酷薄なほど厳しい内容だがものすごく美しいという映画を撮り続けてきたヴィルヌーヴに合っていたようだ。デッカードは人間なのかレプリカント(人造人間)なのかという論争があったらしいが、今作では主人公のK(ライアン・ゴズリング)はレプリカントだと明言されている。最新型のネクサス9型で、倒産したタイレル社の旧型ネクサス8型を解任(抹殺)してまわるブレードランナー(特別捜査官)だ。市民に恐れられる存在でありながら、人間もどきと蔑まれてもいる。部屋の中でしか会えないAIを恋人にしており、おそらく友人は一人もいない。そんなKが仕事の過程で、こどもを産んだ形跡のあるレプリカントの遺骨を発見し、ほかならぬ自分がそのこどもかもしれないという証拠をつかんでいく。レプリカントが出産することはあり得ないことで、事実であれば奇跡なのであって、産まれたこどもには人間と同様に魂がある。Kはそうやって揺さぶられ、真実に翻弄されていくのだが、人間とは何か、というのがテーマなのだろう。レプリカントは強靭な肉体と強さをもつほかは、人間と違いはない。食事をするし、赤い血は流れるし、性行為もするし、感情もある。人間とレプリカントを分ける明確な差はほとんどないと言っていい。レプリカントの殺し方や死に方をみても、人間と同じ体の部位が致命傷になるみたいだ。Kの型は旧型の欠点とされていた反抗という性質を改善し、命令に逆らえないように作られている。だが、Kは移植された記憶とともに、じぶんが母から産まれたこどもかもしれないという物語を信じることで、じぶんの意思で行動を起こしていく。合理的とはとても言えない、人間ならではの行動だ。というより、人間の行動の中でも最上の範囲に入る行為に違いなく、人間であれば超人的と思われるだろう。だからKは人間らしく、かつレプリカントらしく生きたと言えるかもしれない。


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