☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
「スター誕生」3度目のリメイクらしいのだが、たぶん過去の2作はみたことがない。くりかえし作られ、多くの人にみられてきただけあって、ストーリーはシンプルで先が読みやすいけど力強い。主演兼監督のブラッドリー・クーパーは初監督として大成功と言っていいと思う。当初予定されていた監督がクリント・イーストウッドであったことや、イーストウッドの「アメリカン・スナイパー」に主演していたことがあるせいか、イーストウッドの映画作りに影響を受けているのではないかと思った。基本的に人間をみる目はやさしいのだけど、冷徹にみることもおろそかにしないという感じがある。甘いラブストーリーとは大違いだし、主人公のジャック(ブラッドリー・クーパー)が落ちていくさまはすごく説得力があった。人間の醜いところや弱いところを丁寧に掘りさげ、鋭く描いている。もう一人の主人公アリー(レディー・ガガ)にしても、ウェイトレスからミュージシャンとしてスターにのし上がっていくなか、どうしても変わっていかざるを得ないところはリアルだ。人生の残酷な面でもある。アリーはジャックを愛し続けるが、どこかが決定的に変わってしまい、おそらく二度と戻れないだろう二人の関係性も描いていて、複雑で現代的な映画でもあると思う。「スター誕生」は1954年が最初だから、それが現代の目でみても違和感がないように作り直されている点だけでもブラッドリー・クーパーの功績は大きい。俳優としても圧巻だった。プロ顔負けの歌声を身につけ、日常の喋り方まで凝りに凝って、味のあるミュージシャンを完璧に作りあげていた。
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