6才のボクが、大人になるまで。 監督:リチャード・リンクレイター

☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
この映画のいちばん特筆すべきところは撮影に12年もかかっていて、キャストを変えずにこどもの成長をそのままカメラにおさめたところだ。166分の映画のなかで、こどもがみるみる成長していくので驚く。僕はそういう映画と知らずに観たので、最初のほうは「あれ? ちょっと顔変わった?」と訝りながら主役のこどもたちを食い入るようにみていた。わかりやすいのは髪型の変化だが、やはりそれだけじゃない。顔は大人びていくし、体型も変わっていく。姉のサマンサ(ローレライ・リンクレイター)のほうはもっと変化が早い。まさか12年にわたって撮影したとは思わず、6歳のメイソン(エラー・コルトレーン)がついに大学に入学するまでになったときは驚きよりも奇妙な感じをおぼえた。一本の映画のなかで同一人物が成長していくさまを見せられるなんて、思いもしなかった。ゲーム好きのおとなしそうな少年メイソンが、ヘイデン・クリステンセンのような18歳の青年になったさまは見物だった。アイディアとしてはシンプルでだれでも思いつきそうだが、実際に作るのはほとんど不可能に近い試みだったのではないかと思う。撮影期間12年と聞いて、だれが出資するだろう? 途中で頓挫する可能性もきわめて高い。ふつうは12年という年月を取り扱おうとしたら、こども時代は子役が演じ、大人時代は大人の俳優が演じる。みているほうもそういうものだと思って、多少の不自然さ(似てないなど)は目をつむるし、映画の評価にたいして影響はない。それでもリンクレイターがこれを試みたのにはそれなりの野心があったのだと思う。現実に肉薄するリアルさというか、この映画には「時間」が描かれており、飛ぶようにすぎる人生というものが見事に表現されていた。メイソンとサマンサの母親オリヴィア(パトリシア・アークエット)は20代前半の早くに親になり、3回離婚している。彼女は男がらみの失敗が目立つが、子育てをしながら教員という職を得て、たくましく強く生きている。だがそれも映画終盤になると、時間の残酷さみたいなものが静かに牙をむき、オリヴィアに人生に対する疲労のようなものを覚えさせていた。いっぽうでメイソンはやっと待望の家族からの独立を果たし、新しい生活に期待し、これからの楽しいはずの未来にわくわくしているようだ。そういう人生のリアリズムが胸に迫ってくる映画だった。


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