☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
エル・ファニングといえば白い肌をした金髪の美少女という、ほんとに人形のような美しさをもつ女優が思い浮かぶが、この映画ではトランスジェンダーの男性を演じている。短髪ですっぴんで、「メイズ・ランナー」のトーマス・ブロディ=サングスターのような気の強い美青年という感じだ。表情やしゃべり方やしぐさも生意気な男子高校生っぽいし、筋肉をつけ、わき毛さえ生やしてみせている。彼女が主役と思いきや、映画は医師のホルモン治療の説明から始まり、本人よりむしろそれを受けとめる母親の側から主に描かれていく。家族の戸惑いのほうにスポットをあてたのがよかったと思う。よりリアルに感じられたし、家族の物語として楽しむこともできた。レズビアンの祖母とそのパートナーのコンビがおかしいというか、存在が頼もしく、レイ(エル・ファニング)とシングルマザーのマギー(ナオミ・ワッツ)だけの話なら息がつまったかもしれない。そしてこの映画のいいところは、3世代の3人の住む家がすてきなことだ。小物やインテリアがものすごく作りこまれている。外も美しい。というか、美しく撮ろうと徹底している。そんなところも映画の醍醐味のひとつだから、そういう映画をひきあてるとうれしい。