ゼロ・ダーク・サーティ 監督:キャスリン・ビグロー

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
女性のCIA分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)がビン・ラーディン殺害に至るまでを描いた話。2012年の公開以来、たまに無性にみたくなるので、これまで3、4回はみている。マヤのモデルになったCIA局員は実在するらしく、とはいえ国家機密でもあるし、報復の危険もあるので、その人物の素性が明かされることは少なくとも半世紀はないだろうが、こういう偉業を成しても歴史に名前が出てこない人もたくさんいるに違いない。ビン・ラーディンの殺害が真の偉業かどうかは意見が分かれるところかもしれないが、9.11後に対テロ戦争を戦ってきたアメリカからすればまぎれもない偉業だ。マヤを演じたジェシカ・チャステインはこの映画で主演に抜擢されるまでは、マヤとはまるで違うタイプの、どちらかというとおとなしくてやさしい女性を演じることが多かったようだ。マヤ役ははまり役で、これ以後、「インターステラー」や「オデッセイ」などで強い女性を演じることが増えていく。マヤをみているとそんなに力まなくてもと思う反面、彼女の執念には頭がさがるし、気を吐くシーンはすかっとする。僕がこの映画を何度もみたくなるのは、このマヤをみたいというのが一つあるが、もう一つはアメリカの捜査力や軍事力などが地味にリアルに描かれているところだ。拷問さえ技術化されているのがわかる。そして追うべき目標が絞られてくるとその後の行動は迅速で粘り強い。どうやって雇ったのかわからない地元の人間らしい人たちが何人も諜報活動に加わり、対象の行動を分析していく。ビン・ラーディンの暗殺にむかった特殊部隊は合理的で機械のように冷淡で、死者をカウントしながら淡々と任務を進める。ビン・ラーディンが敵にまわしたのはとんでもなく最悪・最強の相手だったわけで、家族を巻きこんでまで盾つく相手ではない。こどもの人生も確実に狂ってしまうだろうし。と普通の感覚ならそう思うが、歴史をふりかえってみても、人間の世界ではそういう常識はあまり通用しないらしい。


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