☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
スパイダーマンのアニメーションなんて何も知らなければみてなかったと思う。映画の前情報は何であれなるべく仕入れないようにしているのだが、それでもちょこちょこと入ってくることはある。「スパイダーマン: スパイダーバース」はとにかく意外なほどの高評価がちょこちょこと入ってきた。この手のヒーローものは今や実写で表現するのが迫力があっていいのだけど、この映画がアニメーションを選んだのは納得が行く。コミックのコマ割りのような表現のほか、登場人物の心の声なんかが吹き出しであらわれ、2Dと3Dの世界がスムーズにつながり、アニメにしかできないことが最初から最後までたっぷりだった。リアリズムを度外視したストーリーや登場人物もアニメらしくて逆によかった。それに主人公はピーター・パーカーではなく、これまでのスパイダーマンとはまったく異なる視点から楽しめるようになっている。複数のスパイダーマンが登場するということは前情報で知っていたのだが、見た目もキャラも一致しない、アニメのタッチさえ異なるスパイダーマンたちだとは思わなかった。別次元の冴えない腹の出たピーター・パーカー、モノクロのハードボイルド系、白いコスチュームのスパイダーウーマン、日本のアニメキャラのような少女が操るロボット、タイムボカンの絵のタッチのような喋るブタ、といった面々だ。アクションシーンもスパイダーマンらしくのびやかで、みていて気持ちがいい。ヒーロー映画に抵抗がある人も、アート作品としてみる価値があると思う。
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