☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
ストップモーション・アニメーション映画で、2018年のベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。あいかわらずの情報量の多さで、しっかり目を見開いてないと、たくさんのすてきな細部を見落としてしまう。今回は日本が舞台で日本語を話す登場人物が多く、日本語と通訳の英語が入り乱れて、耳も情報過多となる。「ファンタスティック Mr.FOX」も同じ手法のアニメーションだったが、感心するのはウェス・アンダーソンはアニメで撮っても実写で撮っても驚くほどテイストが変わらない。もともと実写でスタートした監督だけど、最初からストップモーション・アニメーションのような雰囲気の実写映画を撮っていた。だからウェス・アンダーソンがこういうアニメーションを得意とするのは当然なのだろう。全編ユーモアに満ちているが、話は暗い。戦乱の時代から人間と犬の争いがあり、犬側についた「少年侍」の死や、犬たちが小林一族に敗れてペットに成り下がる歴史が語られ、そういう暗い歴史の上にある現代が描かれる。犬の伝染病が蔓延し、犬たちはゴミの島に強制的に送られるという展開だ。おもしろおかしいストーリーとも言えるが、殺処分や捨て犬など、人間に翻弄されるペットの現状を鋭くついてもいる(映画ではダンスを披露することを仕事とするような観賞用の犬も登場する)。舞台の日本は紋切り型の日本だけど、これほど作りこまれ洗練された世界を作りあげられたら、日本人としてはむしろうれしい気になる。一丁締めが出てきたときには、笑えるけどリアルな滑稽さが勝って苦笑いになった。