ローガン 監督:ジェームズ・マンゴールド

☆☆☆☆☆☆☆☆★★(8点)
「X-MEN」シリーズのウルヴァリンを主人公にした映画で、スピンオフとしてはこれが3作目となる。前2作はみておらず、というのも「X-MEN」の中でもウルヴァリンというキャラクターがどうも苦手だったからだ。絵に描いたようなアメリカ的なマッチョで、言動がやたら粗暴というのも今ひとつ好きになれなかった。野球で言うと、イチローとは対極にある、パワーだけでホームランを量産するようなタイプだ。ただ今作についてはヒーロー映画らしからぬ評価を集めているのが気になり、どうしても観たくなった。映画の冒頭から、「X-MEN」のウルヴァリンとは大きく違っているのがわかる。もうあの生命力がギンギンした感じは消え失せ、すっかり枯れ果てた男になっていた。ウルヴァリンは拳からアダマンチウムという世界で最も硬い金属である爪を出して戦うのだが、そのアダマンチウムの毒素に冒され、不死身だったはずの体がどんどん蝕まれていっているらしい。自己治癒の力も弱まり、普通に老眼を患い、もはや寿命が近づいてきているのが見ていてはっきりわかる。そしてプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)はアルツハイマー病で介護される身になっていた。ローガン(ウルヴァリン)がそんなチャールズ(プロフェッサーX)の面倒をみており、リムジンの運転手をして生活費を稼ぎ、工場の廃屋に暮らしている。ヒーローの晩年を大作映画で撮ったというような、ちょっとこれまでの常識では考えられないような、リアルなヒーロー映画だ。舞台はテキサス州で、ストーリーは西部劇を下敷きにしており、特にイーストウッドの西部劇ものの影響が色濃い。そしてもっともメインとなるストーリーラインは、ローラというローガンの遺伝子で作られた娘との関係だろう。ローラはローガンと同じようにアダマンチウムの爪を持ち、自己治癒の能力があるミュータントで、社会の常識は皆無だ。戦闘能力は大人顔負けで残虐だが、動物的で子供らしい。比べるのも妙だけど、宮崎駿のポニョをちょっと連想させる。この子はこの先社会でやっていけるだろうかと心配させるところがあるが、ローガンとの交流の中でローラの中に芽生えたものを見る限り、心配なさそうだという気がした。西部劇には目をみはる暴力性があり、その系譜をうまく汲みあげた映画にコーエン兄弟の「ノーカントリー」があるが、農家での虐殺など「ローガン」にもその真髄がみえた。ずっと暴力の中で生き抜いてきたローガンは、これまでの人生で多くの命を救ったと同時に奪いもした。最後にローラを含む子供たちを救ったが、ローガンは贖罪されただろうか。


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