☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(9点)
1917年4月の第一次世界大戦における西部戦線(フランス)が舞台。サム・メンデスの祖父の体験をもとに作ったらしいが、完全にフィクションであり、歴史的にもいろいろ脚色はあるみたいだ。とはいえ、いくつかのカットだけでつなげたほぼ全編ワンカットの映像は強烈で、戦場の生々しさは文句なしにリアルだ。若いふたりの兵士が命がけで伝令を最前線に届けるさまは、ところどころクリストファー・ノーランの「ダンケルク」の影響を感じさせる。「ダンケルク」の若者たちはひたすら逃げるのだが、「1917」の若者たちは戦場にどんどん踏みこんでいく。その勇敢さは美しいほどで、戦争自体は醜く、戦場は地獄でおそろしいが、主人公の人間たちは気高く描かれている。もしかしたら戦争を美しく描いている部類の映画に入るのかもしれないが、映画はエンタメなので、それはそれで楽しめばいいと思う。ストーリーはかなりシンプルに絞りこまれ、そのぶんワンカットへの情熱がすさまじく、緻密に計算しつくされている。兵士の視点という点では、ネメシュ・ラースローの「サウルの息子」のように人物に接近して撮るという方法があったが、「1917」はワンカットによって兵士に寄り添っている。没入感のあるゲームの感覚に近いものがあるかもしれない。ところで主人公ウィリアム役のジョージ・マッケイはどこかでみたことがあると思っていたが、「はじまりへの旅」でヴィゴ・モーテンセンの息子を演じていた人だった。キャラがかなり違うから、別人のようでなかなか思い出せなかった。当初、主役はトム・ホランドで考えられていたらしく、スケジュールの都合で実現しなかったらしい。トム・ホランドでもみてみたかった気はするが、ジョージ・マッケイで正解だったと思う。
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